
理由もないのにイライラする。
ふとしたことで、深く落ち込んでしまう。
考えすぎて、なかなか眠れない…。
そんな厄介な「感情」の波に、私たちは日々、翻弄されています。
もし、その感情が、単なる「心のクセ」ではなく、あなたの「内臓」から送られてくる、体からのメッセージだったとしたら?
今回は、心と体は一つと考える「心身一如(しんしんいちにょ)」という東洋医学の知恵を元に、あなたの感情の傾向から、体の状態をセルフチェックし、優しく労るための具体的な方法をご紹介します。
目次
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なぜ、感情と内臓が繋がっているのか?
東洋医学では、私たちの心身の働きを、「肝(かん)」「心(しん)」「脾(ひ)」「肺(はい)」「腎(じん)」という5つの機能グループ(五臓)が担っていると考えます。
そして、この五臓は、それぞれ特定の感情「七情(しちじょう)」と深く結びついています。
感情のバランスが崩れると、対応する臓器がダメージを受け、体調不良として現れる。逆に、特定の臓器が弱っていると、対応する感情が過剰に湧き上がりやすくなる。
心と体は、常にそうして、互いに影響を及ぼし合っているのです。
あなたの感情はどの内臓からのメッセージ?タイプ別セルフケア術
1. イライラしやすい「肝(かん)」タイプ
- 感情のサイン: 怒り、イライラ、情緒不安定
- 体のサイン: 頭痛、肩こり、目の疲れ、不眠、爪がもろくなる
- 「肝」の役割: 全身のエネルギー(気)の流れをスムーズに調整する、いわば交通整理係。
- 対策と予防策:
- 捉え方: 「完璧主義」を手放し、「まあ、いっか」を口癖にしてみましょう。
- 時間の使い方: 意識的に「余白」を作る。予定を詰め込みすぎず、リラックスできる時間(公園の散歩など)をスケジュールに。
- セルフケア: 酸味のあるもの(レモン、梅干しなど)を少し摂る。寝る前に軽いストレッチで、気の巡りを良くしましょう。
2. 喜びすぎる・興奮しやすい「心(しん)」タイプ
- 感情のサイン: 過度な喜び、興奮、テンションのアップダウンが激しい
- 体のサイン: 動悸、息切れ、不眠、物忘れ
- 「心」の役割: 全身に血を送り、思考や意識といった精神活動の中心を担う、司令塔。
- 対策と予防策:
- 捉え方: 過剰な興奮は、心を消耗させるもの、と考える。「穏やかな喜び」「静かな満足感」を大切に。
- 時間の使い方: 興奮した後は、意識的にクールダウンする時間(静かな音楽を聴くなど)を設けましょう。
- セルフケア: 苦味のあるもの(緑茶、ゴーヤなど)を少し摂ると、高ぶりすぎた「心」の熱を鎮める助けになります。
3. 考えすぎる「脾(ひ)」タイプ
- 感情のサイン: 思い悩む、考えすぎる、心配性
- 体のサイン: 食欲不振、胃もたれ、疲れやすい、むくみ
- 「脾」の役割: 食べ物からエネルギー(気・血)を作り出す、消化吸収のシステム。
- 対策と予防策:
- 捉え方: 「答えの出ないことを考え続けても、胃腸が疲れるだけだ」と、思考と体をリンクさせてみましょう。
- 時間の使い方: 食後はすぐに作業に戻らず、5分だけでも、ぼーっとする時間を設ける。
- セルフケア: 甘みのあるもの(さつまいも、かぼちゃなど自然な甘味)で、胃腸を労わる。冷たいものを避けましょう。
4. 悲しみ・憂いやすい「肺(はい)」タイプ
- 感情のサイン: 悲しみ、憂い、クヨクヨしやすい、落ち込みやすい
- 体のサイン: 風邪をひきやすい、咳、鼻水、声に力がない、肌が弱い
- 「肺」の役割: 呼吸を司り、体に必要なエネルギーを取り込み、病気から身を守るバリア機能も担う。
- 対策と予防策:
- 捉え方: 悲しい気持ちを無理にポジティブに変換せず、「今は悲しんでいい時間だ」と、まず自分の感情を認めてあげましょう。
- 時間の使い方: 朝日を浴びながら、ゆっくりと深呼吸する時間を5分だけ作る。
- セルフケア: 辛味のあるもの(ネギ、生姜、大根など)を少し取り入れ、気の巡りを良くしましょう。
5. 怖がり・驚きやすい「腎(じん)」タイプ
- 感情のサイン: 恐怖、不安、ビクビクしやすい、驚きやすい
- 体のサイン: 足腰のだるさ、耳鳴り、頻尿、白髪、物忘れ
- 「腎」の役割: 生命エネルギーの源を貯蔵する、アンチエイジングの鍵。
- 対策と予防策:
- 捉え方: 「怖い」と感じるのは、体が「休んでエネルギーを補充して」とサインを送っている証拠だと考えましょう。
- 時間の使い方: 夜更かしをやめ、睡眠時間を確保することを最優先に。
- セルフケア: 体を温める(特に足腰)。黒い食材(黒豆、黒ごま、海苔など)を食事に取り入れましょう。
まとめ
あなたの感情は、決して敵ではありません。
それは、あなたの体の状態を知らせてくれる、最も正直で、信頼できるメッセンジャーなのです。
イライラしたら「肝が疲れているんだな」、くよくよしたら「肺がエネルギーを欲しがっているんだな」と、自分の内なる声に耳を澄ませてみてください。
その声に優しく応えることこそが、心と体の両方を健やかに保つ、最高のセルフケアなのです。