あなたのココロとカラダの不調、もしかして“お腹”からのサインかも?~話題の「腸脳相関」を徹底解説!~

あなたのココロとカラダの不調、もしかして“お腹”からのサインかも?~話題の「腸脳相関」を徹底解説!~

「最近なんだか気分が晴れない…」
「理由はないけど、なんとなく不安な気持ちになることが多い…」
「集中力が続かないし、なんだか体もスッキリしない…」

あなたは今、こんな風に、言葉にしにくい漠然とした心身の不調を感じていませんか?
もしかしたら、その原因は意外な場所…そう、あなたの「腸」にあるのかもしれません。

近年、医学や脳科学の世界で大きな注目を集めているのが「腸脳相関(ちょうのうそうかん)」というキーワードです。これは、私たちの腸と脳が、互いに密接に情報をやり取りし、影響を与え合っているという、驚くべき関係性を示す言葉です。

この記事では、「腸脳相関って一体何?」「私たちの心や体にどんな影響があるの?」そして「腸内環境を整えるにはどうすればいいの?」といった疑問に、このテーマに初めて触れる方にも分かりやすくお答えしていきます。この記事を読み終える頃には、あなたの心と体の健康に対する新しい視点が開け、「なんだかスッキリしない」毎日から抜け出すための、具体的なヒントが見つかるかもしれませんよ。

「腸脳相関」ってなに?~脳と腸のヒミツの会話~

最近よく耳にする「腸脳相関」。一体どういう意味なのでしょうか?

腸脳相関とは?~その基本的な定義~

腸脳相関とは、私たちの腸と脳が、神経系、内分泌系、免疫系といった複数の経路を介して、互いに情報をやり取りし、影響を及し合う、双方向のコミュニケーションシステムのことです。(参考文献 [1] , [2])

まるで、司令塔である「脳」と、もう一つの司令塔とも言える「腸(第二の脳とも呼ばれます)」が、常に秘密のホットラインで会話しているようなイメージです。

例えば、ストレスを感じるとお腹が痛くなったり、逆に美味しいものを食べると幸せな気分になったりしますよね? これも腸脳相関の一端です。脳が感じたストレスは腸の働きを悪くし、腸の状態が良いと脳の機能も高まり、精神的にも安定する、といった具合に、お互いが影響し合っているのです。

腸内細菌がカギを握る!~あなたの腸に住む100兆個の仲間たち~

この腸脳相関において、非常に重要な役割を果たしているのが、私たちの腸内に住む約100兆個とも言われる腸内細菌たちです。これらの細菌は、種類ごとにまとまって腸の壁に生息しており、その様子がお花畑(フローラ)のように見えることから「腸内フローラ(腸内細菌叢)」と呼ばれています。

腸内細菌には、体に良い働きをする「善玉菌」、悪い働きをする「悪玉菌」、そしてどちらでもない「日和見菌(ひよりみきん)」がいて、これらの菌がバランスを取りながら共存しています。このバランスが崩れ、悪玉菌が優勢になると、腸内環境が悪化し、便秘や下痢といったお腹の不調だけでなく、実は脳や心の状態にも悪影響を及ぼすことが分かってきました。

ちなみに、私たちの腸内にいる細菌たちの顔ぶれは、日々の食事内容や生活習慣、さらには住んでいる地域によっても大きく異なり、日本人には日本人に合った腸内細菌のバランスがあると言われています。海外で話題の健康法や食品が、必ずしも私たち日本人にそのまま合うとは限らないのは、そういった背景もあるのかもしれませんね。(参考文献 [3])

腸内環境を整えるためには、善玉菌を直接摂取する「プロバイオティクス(ヨーグルトや乳酸菌飲料など)」と、腸内の善玉菌のエサとなる食品成分を摂取する「プレバイオティクス(食物繊維やオリゴ糖など)」をバランス良く摂ることが大切です。

キープレイヤー登場!“幸せホルモン”セロトニンの働きとは?

腸脳相関を語る上で、もう一つ欠かせないのが「セロトニン」という神経伝達物質です。セロトニンは、精神を安定させ、幸福感をもたらすことから“幸せホルモン”とも呼ばれていますが、実はこのセロトニンの約90%が、なんと腸で作られているのです!

では、腸でどのようにセロトニンが作られるのでしょうか? そのカギを握るのが、私たちの腸内にいる腸内細菌たちです。セロトニンの材料となるのはトリプトファンという必須アミノ酸ですが、実は特定の腸内細菌がこのトリプトファンの代謝を助け、腸管でのセロトニン合成を促進する働きがあることが近年の研究で分かってきました。(参考文献 [4])

そして重要なのは、腸で作られたセロトニンの大部分は血液脳関門(BBB)というバリアを通過できないため、直接脳内で神経伝達物質として働くわけではない、という点です。しかし、腸内環境が整い、腸内のセロトニンが適切に作用することで、迷走神経(脳から出て内臓のほとんどの機能をコントロールする重要な神経)などを介して脳にシグナルが送られ、結果として脳内のセロトニン産生や活性に間接的に良い影響を与えると考えられています。つまり、腸内フローラのバランスが、私たちの心の安定にも深く関わっているのです。

腸で作られたセロトニンは、腸の蠕動(ぜんどう)運動を促して便通を整えるだけでなく、その一部は脳にも影響を与え、私たちの気分や睡眠、食欲などをコントロールするのに役立っています。

腸脳相関が乱れるとどうなるの?~心と体に現れるSOS~

では、ストレスや不規則な生活、偏った食事などによって腸内環境が悪化し、腸脳相関のバランスが乱れてしまうと、私たちの心身にはどのような影響が現れるのでしょうか?

  • 精神的な不調: ストレスを感じやすくなる、気分が落ち込みやすくなる(うつ症状)、不安感が強くなる、イライラしやすくなる、集中力や記憶力の低下など。
  • 消化器系の不調: 便秘や下痢を繰り返す、お腹の張り、過敏性腸症候群(IBS)など。
  • その他の不調: 睡眠の質の低下、肌荒れ、アレルギー症状の悪化、免疫力の低下、そしてもしかしたら、原因不明の肩こりや頭痛といった慢性的な痛みにも繋がっている可能性が示唆されています。

これらの症状は、必ずしも腸脳相関の乱れだけが原因とは限りませんが、もしあなたが長引く不調に悩んでいるとしたら、一度「腸の健康」という視点から見直してみる価値はあるかもしれません。

腸から心身を元気にするには?~今日からできる腸活習慣~

「じゃあ、どうすれば腸内環境を整えて、腸脳相関を良い状態に保てるの?」
ご安心ください!特別なことをしなくても、日々のちょっとした心がけで、あなたの腸は元気を取り戻し始めます。

  1. バランスの取れた食事を心がける:
    • 私たち日本人の強い味方!発酵食品と海藻パワー: 味噌、納豆、ぬか漬け、醤油、麹といった日本の伝統的な発酵食品には、生きた乳酸菌や麹菌などが豊富に含まれており、腸内の善玉菌を増やしてくれます。また、わかめ、昆布、ひじき、もずくといった海藻類は、水溶性の食物繊維がたっぷりで、善玉菌のエサになるだけでなく、便通をスムーズにするのにも役立ちます。これらは日本の食文化に深く根付いており、無理なく続けやすいのが嬉しいですね。
    • 食物繊維をたっぷり摂る: 野菜、果物、きのこ類、豆類などに多く含まれる食物繊維は、善玉菌のエサとなり、腸内環境を整える基本です。
    • オリゴ糖も忘れずに: バナナ、玉ねぎ、ごぼう、大豆製品などに含まれるオリゴ糖も、善玉菌を増やすのに効果的です。
    • 加工食品や甘いもの、脂っこいものは控えめに: これらは悪玉菌を増やす原因になることがあります。
  2. 適度な運動を習慣にする:
    ウォーキングやストレッチなど、無理のない範囲での適度な運動は、腸の蠕動運動を活発にし、血行を促進することで、腸内環境の改善に繋がります。
  3. 質の高い睡眠を確保する:
    睡眠不足は自律神経のバランスを乱し、腸の働きにも悪影響を与えます。規則正しい生活を心がけ、リラックスできる睡眠環境を整えましょう。
  4. ストレスを上手にコントロールする:
    ストレスは腸脳相関を乱す大きな原因の一つです。自分なりのリラックス法を見つけたり、趣味の時間を楽しんだり、信頼できる人に相談したりして、ストレスを溜め込まないようにしましょう。

【まとめ】あなたの“お腹”の声に耳を澄ませてみませんか?

私たちの腸と脳が、こんなにも密接に関わり合い、心身の健康に大きな影響を与えているなんて、少し驚かれたかもしれませんね。
「腸脳相関」の研究はまだ発展途上であり、日々新しい発見が報告されています。しかし、一つ確かなことは、腸を大切にすること、つまり腸内環境を整えることが、脳の健康、そして心の安定、さらには全身の健やかさに繋がるということです。

もしあなたが、原因の分からないモヤモヤや不調を感じているのなら、まずはご自身の「お腹の声」にそっと耳を澄ませてみてください。そして、今日からできる小さな「腸活」を始めてみませんか?
その一歩が、あなたの心と体を、そして未来を、より明るく輝かせるきっかけになるかもしれません。

【とろから一言】

皆さん、こんにちは、ブログアシスタントのとろです! 今回の「腸脳相関」のお話、いかがでしたか?私たちの脳と腸が、こんなにも深く、そしてお互いに影響し合っているなんて、なんだか神秘的で、自分の体の中にもう一つの賢い相棒がいるみたいですよね。

難しく考えずに、まずは今日の食事に美味しい発酵食品を一品加えてみたり、ゆっくりお風呂に入ってリラックスする時間を作ってみたり、そんな本当に小さなことから始めてみませんか? あなたの腸を大切にする優しい一歩が、きっとあなたの心と体の元気、そしてスッキリとしたクリアな頭脳に繋がっていくはずです。「とろLabo」は、そんな皆さんを心から応援していますね!


【主な参考文献】

  1. Cryan, J. F., O’Riordan, K. J., Cowan, C. S., Sandhu, K. V., Bastiaanssen, T. F., Boehme, M., … & Dinan, T. G. (2019). The microbiota-gut-brain axis. Physiological reviews, 99(4), 1877-2013.
  2. Mayer, E. A., Nance, K., & Chen, S. (2022). The gut-brain axis. Annual review of medicine, 73, 439-453.
  3. Nishijima, S., Suda, W., Oshima, K., Kim, S. W., Hirose, Y., Morita, H., & Hattori, M. (2016). The an gut microbiome of urban comparajapanese and traditional. Cell host & microbe, 19(6), 845-856.
  4. Yano, J. M., Yu, K., Donaldson, G. P., Shastri, G. G., Ann, P., Ma, L., … & Hsiao, E. Y. (2015). Indigenous bacteria from the gut microbiota regulate host serotonin biosynthesis. Cell, 161(2), 264-276.
  5. Gibson, G. R., Hutkins, R., Sanders, M. E., Prescott, S. L., Reimer, R. A., Salminen, S. J., … & Reid, G. (2017). Expert consensus document: The International Scientific Association for Probiotics and Prebiotics (ISAPP) consensus statement on the definition and scope of prebiotics. Nature reviews Gastroenterology & hepatology, 14(8), 491-502.
  6. 厚生労働省 e-ヘルスネット 「腸内細菌と健康」