【脳科学】なぜ、あの人は浮気をするのか?愛情ホルモンと脳の報酬系が解き明かす、人間の“不実”のメカニズム

【脳科学】なぜ、あの人は浮気をするのか?愛情ホルモンと脳の報酬系が解き明かす、人間の“不実”のメカニズム

🧠はじめに:その「裏切り」は、脳のバグか、本能か。

「なぜ、人は浮気をするのか?」
これは人類の歴史において、最も古く、そして最も感情を揺さぶる問いの一つです。

私たちはつい、それを「倫理観の欠如」や「だらしない性格」だけの問題として片付けがちです。
しかし、もしその行動の引き金の一部が、私たちの「脳の配線」「遺伝子のスイッチ」によって引かれているとしたら…?

今回は、このデリケートな問題を、決してゴシップとしてではなく、あくまで「人間の本質」を探るための知的な探求として、脳科学と進化心理学の視点から冷静に解き明かしていきます。

1. 🐁 浮気遺伝子は存在する?伝説の「ハタネズミ実験」

まず、私たちがパートナーに「絆(愛着)」を感じる時、脳内では以下のホルモンが働いています。

オキシトシン

「安らぎ」「信頼」を生む愛情ホルモン。

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バソプレシン

「縄張り意識」「パートナーを守る」防衛ホルモン。

実は、このホルモンを受け取る「受容体(レセプター)」の量によって、浮気しやすさが決まることを示した有名な実験があります。

🐭 プレーリーハタネズミ vs 山岳ハタネズミ

アメリカに生息する「ハタネズミ」には、対照的な2つの種類がいます。

プレーリーハタネズミ

厳格な一夫一婦制。一度つがいになると死ぬまで添い遂げる。

山岳ハタネズミ

乱婚制。特定のパートナーを持たず、次々と相手を変える。

脳科学者が彼らの脳を調べたところ、一途なプレーリーハタネズミは、脳内の「バソプレシン受容体」が圧倒的に多いことが判明しました。
逆に、浮気性の山岳ハタネズミの脳に、遺伝子操作でこの受容体を増やしたところ、なんと彼らは「一途な愛妻家」に変貌したのです。

人間にも「ハタネズミの法則」は当てはまる?

この研究は人間にも応用されています。
スウェーデンの研究(2008年)では、バソプレシン受容体に関する遺伝子(RS3 334)の変異を持っている男性は、そうでない男性に比べて「未婚率や離婚率が高い(絆を結びにくい)」という傾向が示唆されました。

残酷な事実ですが、「生物学的に、絆を感じやすい脳と、そうでない脳」は実在するのです。

2. 🐔 新しい刺激への渇望:「クーリッジ効果」とドーパミンの罠

次に、「浮気」という行動を「快楽(報酬系)」の視点から見てみましょう。
ここでキーワードになるのが、生物学用語の「クーリッジ効果(Coolidge Effect)」です。

脳は「新しい相手」にだけ興奮する

オスの動物は、同じメスと交尾を続けると次第に性的反応が鈍くなります(賢者モード)。しかし、そこに「新しいメス」が現れると、即座に性的興奮が回復し、再び活発になる現象が確認されています。

これがクーリッジ効果です。


脳の報酬系(アクセル)は、「未知の新しい刺激」に対して最も多くのドーパミンを放出するように設計されています。

「マンネリ化したパートナー」= ドーパミンが出にくい(安心感はあるが興奮はない)

「新しい異性」= ドーパミンが爆発する(未知の報酬)

浮気とは、脳が「ドーパミン(新しい快感)」を求めて暴走している状態と言い換えることができます。
特に、性格分析(ビッグファイブ)における「開放性(新しいもの好き)」が高い人は、このドーパミンの罠にかかりやすい傾向があるかもしれません。

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💡 Column:大統領とニワトリの笑い話
「クーリッジ効果」という名前は、第30代アメリカ大統領カルビン・クーリッジの逸話に由来します。
大統領夫妻が養鶏場を視察した際、夫人が「雄鶏は一日に何十回も交尾する」と聞いて感心し、「夫に聞かせてやって」と言いました。
それを聞いた大統領は、養鶏場主にこう尋ねました。
「その雄鶏は、毎回同じ雌鶏といたすのかね?」
「いいえ、毎回違う雌鶏です」
「そうか。今の話を妻に聞かせてやってくれ」

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3. 🛑 最後の砦:「前頭前野」という理性のブレーキ

「遺伝子で決まっている」「ドーパミンのせいだ」
では、浮気をする人は無罪なのでしょうか?
いいえ、絶対に違います。

私たち人間には、ハタネズミやニワトリとは違い、圧倒的に発達した「前頭前野(ぜんとうぜんや)」があります。

衝動 vs 理性

脳内では常に、2つの領域が戦っています。

大脳辺縁系(ハタネズミの脳): 「あの人と関係を持ちたい!」という本能的衝動。

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前頭前野(人間の脳): 「いや待て、それをすれば家庭が崩壊する」「社会的信用を失う」という未来予測と抑制。

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以前の記事([内部リンク:やる気の正体はドーパミン])でも触れましたが、ドーパミンはあくまで「エンジンの回転数」を上げるだけです。
その車を実際に走らせるか、急ブレーキを踏むかを決めるハンドルは、理性の司令塔である「前頭前野」が握っています。

つまり、浮気をしてしまう人というのは、衝動が強すぎる以前に、「前頭前野のブレーキパッド(意志力・自制心)がすり減っている」状態なのです。

🌟まとめ:脳は「傾向」を示すが、行動を決めるのは「あなた」

脳科学は、「あの人はこういう脳だから浮気をする」と免罪符を与えるものではありません。
あくまで「こういう傾向(Tendency)があるかもしれない」という、取扱説明書のようなものです。

  • 生まれつき、絆ホルモンを受け取りにくい脳のタイプかもしれない。
  • 新しい刺激に、人一倍ドーパミンが出やすい脳かもしれない。

しかし、その「傾向」を理解した上で、最終的にどんな「行動(Action)」を選ぶかは、その人の前頭前野(理性と価値観)に委ねられています。

もしパートナー、あるいは自分自身に「危うい傾向」を感じたら?
倫理観だけで説教するのではなく、「前頭前野(ブレーキ)が疲れていないか?」を労ってあげることも、現代的な愛の形かもしれません。