メンタルの不調は「食べ過ぎ」のサイン?脳科学・内科・東洋医学で読み解く、正月病を防ぐ『胃腸マネジメント』

メンタルの不調は「食べ過ぎ」のサイン?脳科学・内科・東洋医学で読み解く、正月病を防ぐ『胃腸マネジメント』

あけましておめでとうございます……と言いたいところですが、正直、体が重くてそれどころじゃない、という方はいませんか?

「仕事始めが憂鬱だ」「なんとなく不安でイライラする」。
もし今、そんな「正月病」のような症状を感じているなら、それはあなたの心が弱いからでも、気合が足りないからでもありません。

原因は、もっと物理的なところにあります。それは「胃腸の悲鳴」です。

年末年始の楽しい暴飲暴食が、知らず知らずのうちにあなたの内臓を疲れさせ、それが巡り巡ってメンタルの不調を引き起こしているのです。

この記事では、脳科学、内科、そして東洋医学のトリプル視点で、「食べ過ぎとメンタル」の意外な関係を解き明かし、今日からできる具体的な「胃腸マネジメント術」をお伝えします。

今年の運勢を上げる一番の近道は、おみくじよりも「整った胃腸」かもしれませんよ。


脳と腸はホットラインで繋がっている

「腸は第二の脳」という言葉を聞いたことがあるでしょうか? これは単なる比喩ではありません。脳と腸は、自律神経やホルモンを通じて、密接に情報をやり取りしているのです。

これを「脳腸相関(のうちょうそうかん)」と呼びます。

驚くべきことに、私たちが幸せを感じるために必要な「セロトニン(幸せホルモン)」の約90%は、実は脳ではなく、腸で作られています。

つまり、食べ過ぎでお腹を壊したり、腸内環境が悪化したりすると、幸せホルモンの材料がうまく作れなくなり、脳が「幸せ」を感じにくくなってしまうのです。「おせちを食べ過ぎて鬱になる」というのは、科学的に十分にあり得る話なのです。


ダルさの正体は「血糖値乱高下」と「血流不足」

メンタルの不調だけでなく、あの鉛のように重い「体のダルさ」にも、明確な医学的理由があります。

1. メンタルを乱す「血糖値スパイク」

お正月は、お餅、甘い栗きんとん、お酒など、糖質のオンパレードです。これらを一気に食べると、血液中の糖分(血糖値)が急激に上昇します。

すると体は慌てて、血糖値を下げる「インスリン」というホルモンを大量に分泌します。その結果、今度は血糖値がジェットコースターのように急降下します。これを「血糖値スパイク」と呼びます。

この血糖値が急降下する瞬間に、脳はエネルギー不足に陥り、強烈な眠気、イライラ、不安感といったメンタル不調を引き起こします。私たちはこの不快感を、「休みが終わるストレスのせいだ」と勘違いしがちなのです。

2. 体を重くする「消化への血流集中」

もう一つの原因は「血液の分配」です。食べたものを消化・吸収するためには、胃腸に大量の血液が必要になります。

満腹状態になると、体中の血液が胃腸に集中し、その分、脳や筋肉への血流が減ってしまいます。その結果、頭がボーッとしたり、手足が重だるくなったりするのです。医師の中には「満腹状態は、軽い麻酔がかかっているようなもの」と表現する人もいます。


東洋医学の視点:「食滞(しょくたい)」が気を塞ぐ

東洋医学の視点で見ても、食べ過ぎは体に悪影響を与えます。

消化しきれない食べ物が胃腸に停滞することを「食滞(しょくたい)」と言います。東洋医学では、胃腸は「土(つち)」の性質を持つと考えられています。土が腐ってドロドロになると、その上に立つ植物(精神や気力)も根腐れを起こし、枯れてしまいます。

胃腸が詰まることで、全身を巡る「気(エネルギー)」の流れが滞り、やる気が出ない、体が重いといった症状が現れると考えるのです。


実践編:脳と体を守る「鉄壁の胃腸マネジメント」3選

では、どうすればこの悪循環を断ち切ることができるのでしょうか? 内科・脳科学・東洋医学の知見を総動員した、今日からできる具体的なアクションプランをご紹介します。

① 【食事中】血糖値スパイクを防ぐ「なますファースト」の儀式

これからの食事で意識してほしいのが、食べる順番です。いきなりお餅やお酒に手を伸ばすのではなく、まずは食物繊維や酸味のあるものから食べましょう。

おせち料理なら「紅白なます」が最強です。お酢に含まれるクエン酸や、野菜の食物繊維には、糖の吸収を穏やかにし、血糖値の急上昇を防ぐ効果があります。これを「セカンドミール効果」と呼び、次の食事の血糖値上昇まで抑えてくれるという優れものです。

「まずは、なますから」。この習慣が、あなたのメンタルを守る防波堤になります。

② 【食後】脳への血流を戻す「皿洗いエクササイズ」

「食べてすぐ横になる」のは、胃腸に血液を集中させ、ダルさを加速させる行為です。食後は、あえて少し体を動かしましょう。

おすすめは「自分の使った皿を洗うこと」です。

立ち上がって軽く手足を動かすことで、筋肉がポンプの役割を果たし、胃腸に溜まった血液を全身に循環させることができます。これにより、脳への血流が戻り、食後の強烈なダルさや眠気を防ぐことができます。面倒な家事も、「メンタル回復のエクササイズ」と考えれば、少し楽しくなるかもしれません。

③ 【翌日】胃腸の休日を作る「16時間リセット(プチ断食)」

もし「昨日は食べ過ぎたな…」と感じたら、翌日は胃腸に「休日」を与えましょう。

具体的な方法は簡単です。「前日の夕食から、次の食事まで16時間空ける」だけです。例えば、夜8時に夕食を食べたら、翌日の昼12時まで固形物を控えます(水分はOK)。

空腹の時間が続くと、体内で「オートファジー」という仕組みが働き始めます。これは、細胞が自分自身の古くなったタンパク質などを分解・リサイクルし、細胞を新しく生まれ変わらせる機能です。

胃腸が空っぽになり「グーッ」と鳴るのは、お腹が空いた合図ではなく、胃腸が「お掃除中ですよ」と教えてくれるサインです。この音を楽しめるようになれば、あなたはもう胃腸マネジメントの達人です。


【補足コラム】どうしてもの時は「左側を下にして寝る」

どうしてもダルくて動けない…という時は、せめて寝る向きを工夫しましょう。

人間の胃は、体の左寄りにあり、食道からの入り口(噴門)が上、腸への出口(幽門)が右下に向かうような形をしています。そのため、体の左側を下にして寝ると、食べたものが重力に従ってスムーズに腸へ流れやすくなり、消化を助けることができます。逆に右側を下にすると、逆流しやすくなるので注意が必要です。


まとめ:整腸剤は「飲むメンタルケア」

お正月明けの不調は、あなたのせいではありません。美味しいものをたくさん受け止めてくれた、胃腸の「お疲れサイン」です。

「今日は胃を休める日」を作ることは、決してサボりではなく、次の戦いに備えるための「戦略的な回復」です。

今年も良い一年にするために、まずは自分の体を労ってあげてください。あなたの胃腸が整えば、きっと心も整い、自然とやる気も湧いてくるはずです。