【東洋医学病理】気象病の根本原因は「胃腸」にある。湿邪と水滞を引き起こす脾虚のメカニズム

【東洋医学病理】気象病の根本原因は「胃腸」にある。湿邪と水滞を引き起こす脾虚のメカニズム

前回の記事では、雨の日の頭痛やだるさ(気象病)が、内耳のむくみと自律神経のパニックによる物理的なエラーであることを解説しました。

しかし、ここで一つの疑問が生まれます。
「同じように低気圧の中にいるのに、気象病になる人と、全く平気な人がいるのはなぜか?」

その答えは、耳の奥にあるのではなく、あなたの「お腹(胃腸)」にあります。 東洋医学では、気象病の根本原因を「耳の病」ではなく、体全体の水分代謝システムが崩壊した「脾(ひ)の病」として捉えます。
今回は、気圧頭痛の裏側で起きている恐ろしいシステムの連鎖を、病理学的に解説します。

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1. 内外の「湿」が結びつく時、気象病は発症する

東洋医学には、梅雨や雨の日の過剰な湿気を「湿邪(しつじゃ)」という外部からの攻撃(外邪)として捉える考え方があります。
しかし、健康な人であれば、外から湿邪がやってきても、体のバリア機能で弾き返すことができます。

気象病を発症してしまう人は、外から湿気が来る前から、すでに体の中に「水滞(すいたい=余分な水たまり)」という内なる湿気を抱え込んでいます(これを内湿と呼びます)。
外からの「湿邪」と、体の中の「水滞」。この2つの水が磁石のように引き合い、結びついて暴走した時に初めて、あの強烈な頭痛とだるさが引き起こされるのです。

2. なぜ体の中に「水たまり」ができるのか?(脾虚生湿)

では、なぜ体の中に「水滞(内湿)」が溜まってしまうのでしょうか。
ここで登場するのが、昨日「慢性疲労」の記事でも解説した、エネルギー生成と水分代謝の要である「脾(ひ=消化吸収システム)」です。

東洋医学において、脾は「土(堤防)」の性質を持ち、体内の水分が氾濫しないようにコントロールする「排水ポンプ」の役割を担っています。これを「脾主運化(ひしゅうんか)」と呼びます。

しかし、冷たい飲み物、脂っこい食事、そしてストレスやエナジードリンクの過剰摂取によって、この脾(排水ポンプ)が壊れてしまうとどうなるでしょうか?
ポンプが止まった体内では、水が巡らずに淀み、あちこちに水たまり(水滞)ができます。これを専門用語で「脾虚生湿(ひきょせいしつ=脾が弱ることで湿が生まれる)」と言います。

つまり、あなたの気象病の本当の原因は、「耳が弱い」からではなく、「日頃の負担で胃腸(脾)の排水ポンプがぶっ壊れているから」なのです。

3. 重だるい頭痛の病理「清陽不升(せいようふしょう)」

脾が壊れ、水滞が溜まった状態で低気圧(湿邪)が来ると、体内の水分は上へと膨張し、頭部を覆い尽くします。

水(湿)は物理的に「重く、下に沈む(重濁)」性質を持っています。
この重い水の雲が頭に立ち込めると、本来、脳に送られるはずの軽やかで新鮮なエネルギー(清陽:せいよう)が、雲に遮られて上に登れなくなります。

この病理状態を「清陽不升(せいようふしょう)」と呼びます。
新鮮なエネルギーと酸素が脳に行き渡らないため、ズキズキとした痛みではなく、「頭に濡れた重いタオルを被せられたような」あの独特の重だるい締め付け頭痛が発生するのです。

まとめ:耳ではなく、お腹(脾)を治せ

気象病(水滞)を根本から治すためには、耳の血流を良くするだけでは足りません。
体内のヘドロを排出し、壊れた排水ポンプを修理する「健脾利湿(けんぴりしつ=脾を元気にして、湿を抜く)」というアプローチが不可欠です。

雨の日に体調を崩しやすい人は、まずは「昨日解説した慢性疲労のサイン(脾気虚)」が出ていないか胸に手を当ててみてください。エナジードリンクを置き、胃腸を休めることこそが、最強の気象病対策なのです。