
「これ、急ぎでお願いできる?」
「悪いけど、これもついでにやっておいて」
そう言われた時、心の中では「無理です」と叫んでいるのに、口からは「…分かりました」と言ってしまう。
そして後で、「なんで断れなかったんだろう」と自己嫌悪に陥る。
そんな経験はありませんか?
あなたが悪いのではありません。あなたは、優しくて責任感が強いだけです。
しかし、その優しさが「搾取」の対象になってしまっているなら、話は別です。
今回は、相手との関係を壊さず、かつ自分の身を守るための「大人の護身術(交渉テクニック)」をお渡しします。
第一章:マインドセット「そのボールは、誰のもの?」
まず、テクニックの前に「心構え」を変えましょう。
断れない人は、無意識のうちに「相手の困りごと」を「自分の課題」として背負い込んでしまっています。
アドラー心理学では、これを「課題の分離」と言います。
- 仕事が終わらなくて困るのは誰か? → 相手
- 締め切りに間に合わせる責任は誰にあるか? → 相手
相手が勝手に投げてきた「責任」というボールを、あなたが必死にキャッチしてあげる必要はありません。
「冷たい」と思う必要もありません。それは本来、相手が自分で持つべき荷物なのですから。
第二章:最強の護身術「Yes, if…」法
とはいえ、真正面から「No(嫌です)」と言うのは、角が立ちますし、勇気がいりますよね。
そこで登場するのが、「Yes, if…(イエス・イフ)」法です。
これは、「断る」のではなく、「条件付きで引き受ける(交渉する)」という高等テクニックです。
- 悪い断り方: 「無理です」「できません」(No)
→ 相手は「拒絶された」と感じ、攻撃的になることがあります。 - Yes, if… の返し方:
「いいですよ(Yes)。もし(if)、納期を来週まで待ってくれるなら」
「いいですよ(Yes)。もし(if)、この部分の作業は〇〇さんがやってくれるなら」
なぜ、これが効くのか?
- 「拒絶」していない:
一度「いいですよ」と言っているので、相手は敵対心を抱きにくくなります。 - ボールを打ち返せる:
「条件を飲むか、諦めるか」という判断(ボール)を、相手に投げ返すことができます。 - 「コスト」を意識させる:
「私を使うには、これだけの条件(コスト)が必要ですよ」と暗に示すことで、相手は「安易な丸投げ」ができなくなります。
第三章:【実践編】今日から使える3つの「if(条件)」
具体的な「if」のバリエーションを持っておきましょう。
1. 「納期」を条件にする
「いいですよ。ただ、今は手一杯なので、着手できるのは来週の火曜日からになりますが、それでもよろしいですか?」
→ 急ぎの相手なら、これだけで「じゃあ、他を当たります」と引いてくれます。
2. 「品質(範囲)」を条件にする
「いいですよ。ただ、全部は無理なので、骨子の作成までならお手伝いできますが、いかがですか?」
→ 前回の記事で触れた「丸投げ」を回避し、部分的な「お手伝い」に留めることができます。
3. 「交換」を条件にする
「いいですよ。その代わり、私が今やっているこの事務作業を、そちらで巻き取ってもらえますか?」
→ これが最強です。対等なトレードを持ちかけることで、相手があなたを「搾取対象」ではなく「ビジネスパートナー」として見るようになります。
まとめ
「いい人」をやめることは、悪いことではありません。
それは、自分自身の時間と心を大切にする、という宣言です。
「Yes, if…」
この魔法の言葉をポケットに入れて、明日からは、笑顔で、しなやかに、ボールを打ち返してやりましょう。
あなたはもう、誰かの「都合のいい人」ではありません。