
はじめに
「Yes, But(はい、でも…)」のゲームとは、精神科医エリック・バーンが提唱した「交流分析(Transactional Analysis:TA)」において、最も代表的な心理ゲーム(無意識の対人関係パターン)の一つです。
表面上は「問題の解決策を求めている」ように見せかけながら、裏面では相手の提案をことごとく論破し、最終的に相手を無力感に陥らせることを目的としたコミュニケーションです。 このゲームの根底にある「裏面交流」と、脳が求める「ストローク(精神的報酬)」のメカニズムについて解説します。
1. 【定義と理論】交流分析における「ゲーム」
正式名称は「なぜ〜しないの?-はい、でも…(Why Don’t You… Yes, But…)」。 仕掛ける側が悩みを相談し、応じる側がアドバイスをすると、「はい(Yes)」と一旦は受け入れるものの、直後に「でも(But)」と理由をつけて提案を拒否し続ける一連のやり取りを指します。
交流分析では、これを「建前」と「本音」がずれたコミュニケーションと定義します。
- 社会的レベル(建前):「大人対大人」の合理的な問題解決プロセス。
- 心理的レベル(本音):「助けを求める子ども対、どうせ助けられない親」という構図で、相手を欲求不満にさせるプロセス。
2. 【メカニズム】なぜ解決を拒むのか?
仕掛け人は、問題を解決したいわけではありません。彼らの真の目的は、心理的な報酬(ストローク)を得ることにあります。/
人間は他者からの関心や反応(ストローク)を渇望します。肯定的な反応が得られない場合、人は「同情」や「困惑」といった否定的な反応であっても、それを報酬として集めようとします。親身にアドバイスをさせることで、相手の関心を自分に引き留めているのです。
相手の提案を全て切り捨てることで、「やっぱり私の状況は特別で、誰にも解決できないほど困難なのだ」という自己正当化(自己の脚本の確認)を行います。 最終的に助言者が「もう勝手にしろ」と諦めた瞬間、仕掛け人は「相手を打ち負かした」という無意識の勝利感(ペイオフ)を得てゲームが終了します。
🛡️ 【コラム】ゲームの破壊方法
このゲームに巻き込まれないための学術的な対処法は、「親」の立場からアドバイスを与える交差的交流を避けることです。 「それは大変だね。あなた自身はどうすればいいと思う?」と、相手に「大人」としての責任を突き返す(ストロークの供給を断つ)ことが、ゲームの進行を止める唯一の手段とされています。














