- 心理学・脳科学
- 2025年5月31日
【DMNとCEN】脳内サミット開催!「ぼんやり脳 vs 集中脳」~最高のパフォーマンスを引き出す脳のバランス調整法~
「なんだか最近、集中力が続かない…」「良いアイデアが全然浮か……

フェニルエチルアミン(Phenylethylamine: PEA)とは、脳内で分泌される神経伝達物質(痕跡アミン)の一種で、化学構造が覚醒剤や幻覚剤に似ていることから「天然のアンフェタミン」とも呼ばれる物質です。
恋愛初期の激しい高揚感、動悸、食欲不振などは、この物質が大量に放出されることで引き起こされます。 別名「恋愛ホルモン(Love Molecule)」として有名ですが、その強力な覚醒作用には持続限界があり、いわゆる「恋の賞味期限」の生物学的な根拠ともなっている物質です。
PEAは、主要な神経伝達物質(ドーパミンなど)とは異なり、「痕跡アミン(Trace amine)」という微量調整役に分類されます。
定義:
必須アミノ酸である「フェニルアラニン」から酵素反応によって合成される有機化合物。 神経修飾物質(ニューロモジュレーター)として働き、他の神経伝達物質の放出を促進させる「起爆剤」のような役割を担っています。
化学的特徴:
その分子構造は、精神刺激薬であるアンフェタミンと非常に酷似しています。 そのため、脳に対して強力な覚醒作用と抗うつ作用をもたらします。

「チョコレートを食べると幸せになる」と言われるのは、カカオ豆にPEAが含まれているからです。 かつてはこれが「媚薬」の効果を生むと考えられていましたが、近年の研究では、食品から摂取したPEAの多くは脳に届く前に代謝されてしまうため、食べて恋に落ちるほどの直接的な効果は限定的(プラシーボ効果や味覚による快楽が大きい)とされています。
PEA自体が快楽を与えるというよりは、快楽物質を「ドバっと出させる」スイッチとして機能します。
① ドーパミン・ノルアドレナリンの放出促進
PEAが分泌されると、脳内のシナプス前終末に作用し、貯蔵されていた「ドーパミン(快楽)」や「ノルアドレナリン(興奮)」を一気に放出させます。 これにより、心拍数の上昇、瞳孔の散大、発汗、そして強烈な幸福感(ユーフォリア)が生じます。これが「恋に落ちた状態」の正体です。
② 認知機能の変容(あばたもえくぼ)
PEAによる強力な覚醒作用は、理性(前頭前野)の働きを一時的に麻痺させ、対象への批判的な判断力を低下させます。 相手の欠点さえも愛おしく見える「恋は盲目」状態を作り出し、生殖行動へと突き動かすドライバーとなります。
PEAの放出は、永遠には続きません。 脳がこの強力な刺激に慣れてしまう(受容体のダウンレギュレーション)か、あるいはPEA自体が枯渇するため、その継続期間は一般的に「数ヶ月から長くて3年」と言われています。

「3年目の浮気」や「倦怠期」が訪れるのは、PEAという天然の麻薬が切れ、脳がシラフに戻った証拠です。 そこから先は、PEA(情熱)ではなく、オキシトシン(安らぎと信頼)へと関係性を移行できるかが、パートナーシップ維持の鍵となります。
PEAは恋愛以外でも分泌されます。 マラソンなどで苦しい状態が続くと、脳が痛みを麻痺させるためにエンドルフィンと共にPEAを放出します。 いわゆる「ランナーズハイ」の一部は、このPEAによる覚醒作用だと考えられています。
フェニルエチルアミン(PEA)は、私たちを理屈抜きの恋へと突き落とす、脳内の強力な起爆剤です。
その作用は劇的ですが、短命です。
燃え上がるような恋心が消えるのは「愛が冷めたから」ではなく、脳が正常な化学バランスに戻ろうとする「生理現象」に過ぎません。
その仕組みを知っていれば、ドキドキが消えた後の穏やかな関係(オキシトシン的幸福)を、より大切に思えるはずです。