- 心理学・脳科学
- 2025年12月21日
「仕事ができる上司」ほど部下を潰す理由。「すごいね」と褒めるのをやめて、〇〇に変えたら部下が勝手に動き出した話
序章:あなたのチーム、「指示待ち」になっていませんか?……

海馬(かいば|Hippocampus)とは、大脳辺縁系の一部であり、新しい記憶の形成(固定化)や、空間的なナビゲーション能力に関わる脳器官です。
脳の中で唯一、「大人になっても新しい神経細胞が生まれ続ける(神経新生)」という特殊な性質を持つ部位として知られており、記憶学習だけでなく、メンタルヘルスや認知症予防の観点からも極めて重要な役割を担っています。
定義
大脳側頭葉の内側に位置する、弓なりの細長い神経構造。 その形状が「タツノオトシゴ(学名:Hippocampus)」に似ていることから、16世紀の解剖学者アランチウスによって名付けられました。
構造的特徴
左右に一つずつ存在し、情動を司る「扁桃体」と隣接しています。 大脳皮質からの情報を受け取り、処理した後に再び皮質へ戻すという回路(パペッツ回路など)の中継点となっています。
海馬の生理学的な主な機能は、大きく分けて以下の2つです。
① 記憶の固定化(Consolidation)
日常的な出来事(エピソード記憶)や学習した情報は、まず海馬に「短期記憶」として一時保存されます。 そこで情報の選別が行われ、必要と判断されたものだけが大脳皮質へ送られ、「長期記憶」として定着します。この転送プロセスは主に睡眠中に行われます。
② 空間認知(Spatial Cognition)
自身の現在地や、目的地までのルートを把握する機能です。 海馬内には、特定の場所にいる時だけ発火する「場所細胞(プレイス・セル)」が存在し、脳内に外部環境の地図(認知地図)を形成しています。

記憶の工場(関所)
絶えず運ばれてくる「記憶の素材(短期記憶)」を検品し、「製品(長期記憶)」として出荷する工場のような役割です。
脳内GPS
カーナビのように、地図データと現在地を照らし合わせる役割です。 初めての場所で迷わずに歩けるのは、海馬がリアルタイムで地図を描いているからです。
海馬の最大の特徴は、環境や状況によって物理的に変化する「可塑性(Plasticity)」の高さにあります。これには負の側面と正の側面があります。
海馬は、ストレスホルモン(コルチゾール)の受容体が脳内で最も多い部位の一つです。 そのため、慢性的なストレスに晒されると、神経細胞が破壊され、物理的に「萎縮」してしまいます。 うつ病やPTSD(心的外傷後ストレス障害)の患者において、海馬の体積減少や記憶力低下が見られるのはこのためです。

一方で、海馬は鍛えれば大きくなります。 複雑な道路網を暗記しなければならないロンドンのタクシー運転手の脳を調べた研究では、一般人に比べて「海馬の後部が有意に肥大している」ことが判明しました。 また、有酸素運動によってBDNF(脳由来神経栄養因子)が分泌され、新しい神経細胞が生まれる(神経新生)ことも確認されています。
海馬は、私たちが「過去」を蓄積し、「現在地」を知るための羅針盤です。
ストレスに対して脆弱な器官ですが、同時に、運動や学習によって生涯成長し続けるポテンシャルも秘めています。
「睡眠」で記憶を定着させ、「運動」で細胞を育てる。
このシンプルな習慣こそが、海馬を守る最大のメンテナンスとなります。