花粉症とは。アレルギー性鼻炎の発症機序と、免疫寛容を司る「制御性T細胞」の役割

花粉症とは。アレルギー性鼻炎の発症機序と、免疫寛容を司る「制御性T細胞」の役割

本記事では、季節性アレルギー性鼻炎(いわゆる花粉症)の定義、発症メカニズム、および近年注目されている免疫制御システムについて解説します。

1. 定義

アレルギー性鼻炎とは、鼻粘膜に付着した抗原(アレルゲン)に対する、I型アレルギー反応(即時型アレルギー)によって引き起こされる炎症疾患です。
主症状として、発作性反復性のくしゃみ、水様性鼻漏、鼻閉(鼻づまり)の3徴候が挙げられます。

2. 発症機序(メカニズム)

発症に至るプロセスは、大きく「感作(Sensitization)」と「発症(Elicitation)」の2段階に分類されます。

① 感作(Sensitization)

抗原が体内に侵入しても、初回は症状が出ません。以下のプロセスを経て、体が抗原を「異物」として記憶する状態を指します。

抗原提示

樹状細胞などが花粉抗原を取り込み、ヘルパーT細胞(Th2)へ情報を伝達します。

抗体産生

Th2細胞がB細胞を刺激し、花粉に特異的な「IgE抗体」を産生させます。

結合

産生されたIgE抗体が、粘膜下のマスト細胞(肥満細胞)の表面に結合し、待機状態となります。

② 発症(Elicitation)

感作が成立した状態で、再び抗原が侵入すると反応が起こります。

架橋

抗原がマスト細胞上のIgE抗体と結合(架橋)します。

脱顆粒

これをトリガーとして、マスト細胞内の顆粒が放出されます(脱顆粒現象)。

炎症惹起

放出された化学伝達物質(ヒスタミン、ロイコトリエン等)が神経や血管に作用し、くしゃみや鼻閉を引き起こします。

3. 免疫恒常性と「制御性T細胞(Treg)」

従来、アレルギーはTh1細胞とTh2細胞のバランス崩壊(Th2優位)が原因とされてきました。しかし近年、より上位の制御システムである「制御性T細胞(Regulatory T cell:Treg)」の重要性が確立されています。

Tregは、過剰な免疫反応を抑制し、自己や無害な抗原(花粉や食物)への攻撃を停止させる「免疫寛容(Immune Tolerance)」を誘導する役割を持ちます。
現代におけるアレルギー患者の増加は、環境要因の変化による、このTregの機能低下が一因と考えられています。

【コラム】とろの「超」翻訳:体内のパニックと賢者

ここまでは医学的な定義を記述しましたが、イメージしやすいように比喩を使って翻訳します。
体内では、以下のようなドラマが起きています。

Th2細胞(司令官)

花粉を見て「敵襲だ!」とパニックになり、総攻撃命令を出す人。

マスト細胞(爆撃機)

命令を受けて、ヒスタミン(爆弾)を投下し、周囲を火の海(炎症)にする部隊。

制御性T細胞(賢者)

「落ち着け、それはただの花粉だ。攻撃するな」と司令官をなだめ、戦争を止めさせる役割。

花粉症の人は、この「賢者(Treg)」が眠ってしまっている状態です。
薬で爆弾(ヒスタミン)を処理するのも一つですが、最も根本的な解決策は、賢者を目覚めさせることです。
そのための具体的なアプローチ(ビタミンD、腸内環境)については、[翌日公開の実践記事]にて解説します。