
もし、一日一回「ありがとう」と口に出すだけで、あなたの脳が物理的に変化し、ストレスが減り、自己肯定感が高まっていくとしたら…?
それは、スピリチュアルな話ではありません。
近年の脳科学研究で、「感謝」という感情が、私たちの脳機能や幸福度に、極めて強力な影響を与えることが次々と明らかになっているのです。
100本目の記事を目前にした今回、すべての土台となる「自己肯定感」を育むための、最もシンプルで、最も強力な脳のトレーニング…「感謝」の科学に迫ります。
「ありがとう」と言う時、あなたの脳で起きていること
感謝の気持ちを感じたり、それを言葉にして伝えたりする時、私たちの脳、特に前頭前野(ぜんとうぜんや)の中でも、他者との関係性や、客観的な自己評価を司る「内側前頭前野(ないそくぜんとうぜんや)」という領域が活発に活動します。
この領域が活性化すると、私たちは物事をよりポジティブに捉え直し、衝動的な感情(怒りや不安)をコントロールしやすくなります。つまり、「感謝」は、脳の「理性と幸福の司令塔」を直接鍛える、最高のトレーニングなのです。
脳を幸せで満たす「3つの幸福ホルモン」のシャワー
さらに、感謝は、私たちの気分や幸福感を直接コントロールする、3つの重要な脳内物質の分泌を促します。
1. セロトニン(穏やかな幸福)
感謝の気持ちは、精神の安定を司る「セロトニン」の分泌を促します。セロトニンが満たされると、私たちは心が落ち着き、漠然とした不安が和らぎ、穏やかな幸福感に包まれます。
2. ドーパミン(やる気の幸福)
他人に「ありがとう」と伝えて喜ばれた時、私たちの脳では「報酬系」が刺激され、「ドーパミン」が放出されます。これは「もっとやりたい!」という、やる気やモチベーションの源泉となる快感です。
3. オキシトシン(繋がりの幸福)
感謝を伝え合うことで、人と人との間には「信頼」や「絆」が生まれます。この時、脳内では「信頼ホルモン」である「オキシトシン」が分泌されています。オキシトシンは、ストレスを軽減し、孤独感を和らげ、深い安心感をもたらしてくれます。
【実践編】感謝で脳を再配線する、3つの簡単な習慣
感謝の習慣は、脳の神経回路そのものを変える力(神経可塑性)を持っています。ネガティブな思考のクセを、ポジティブな回路へと物理的に「再配線」するのです。
1. 感謝日記(1日3つ、書くだけ)
寝る前に、その日にあった「感謝できること」を、大小問わず3つだけ書き出します。「美味しいコーヒーが飲めた」「電車が時間通りに来た」など、どんな些細なことでも構いません。「感謝すべきこと」を意識的に探す訓練が、脳の「幸せ発見能力」を高めます。
2. 「ありがとう」の口癖化
心の中で思うだけでなく、「ありがとう」を意識的に口に出して、相手に伝えましょう。コンビニの店員さん、宅配便の配達員さん、家族や同僚。伝えることで、相手が笑顔になり、ドーパミンとオキシトシンのループが回り始めます。
3. ネガティブを「おかげさま」に変換する
何か嫌なことがあった時、無理にポジティブになる必要はありません。ただ、その出来事の「おかげで」学べたこと、気づけたことを、一つだけ探してみるのです。「仕事でミスをした」→「おかげで、確認作業の重要性を再認識できた」と。この思考の転換が、脳の回復力を高めます。
まとめ
「ありがとう」という、たった5文字の言葉。
それは、脳の司令塔を鍛え、3つの幸福ホルモンを放出し、ネガティブな思考回路さえも変えてしまう、最強の脳トレです。
特別なことは何もいりません。
まずは今日、あなたの隣にいる人に、心からの「ありがとう」を伝えてみることから、始めてみませんか。
その一言が、あなたの脳を、そしてあなたの人生を、温かく、豊かなものに変えていく、最初のスイッチになるはずです。