- 心理学・脳科学
- 2025年10月7日
【行動できない“完璧主義”】なぜ、計画を練るほど「最初の一歩」が踏み出せなくなるのか?脳を支配する「分析麻痺」の罠
「よし、やるぞ!」と意気込み、完璧な計画を立てるために、本を……

師走(しわす)。そろそろ「大掃除」の文字が頭をよぎる季節です。
散らかったデスクや部屋を見て、「ああ、片付けなきゃ…」と溜息をつく。その瞬間、なんだかドッと疲れを感じませんか?
「片付けが苦手なのは、性格がだらしないからだ」
そう自分を責めるのは、今日で終わりにしましょう。
あなたが疲れる本当の理由。それは、散らかったモノたちが発する「視覚ノイズ」によって、脳のメモリが物理的に食いつぶされているからなのです。
今回は、根性論や運気の話は一切抜きにして、「脳のスペックを守るため」の、科学的な片付けのお話をします。
「視覚ノイズ(Visual Noise)」という言葉をご存知でしょうか?
2011年、プリンストン大学の神経科学研究所が、ある衝撃的な研究結果を発表しました。
「視界に入ってくるモノが多ければ多いほど、脳の視覚野の処理能力(キャパシティ)は奪われ、集中力と情報処理能力が著しく低下する」
どういうことかと言うと、あなたの脳は、意識の上では「無視している」つもりでも、無意識下では、散らかった服、積まれた本、出しっぱなしのペンの一つ一つを「処理すべき情報」として認識し、スキャンし続けているのです。
散らかった部屋にいる状態。
それは、パソコンで言うなら「ブラウザのタブを100個開きっぱなしにしている状態」と同じです。
何もしていなくても動作が重くなるのは、バックグラウンドで脳のメモリが大量消費されているからです。これを脳科学では、一種の「DoS攻撃(負荷をかけてダウンさせる攻撃)」のようなものだと捉えることができます。
「そんなに見なきゃいいじゃないか」と思いますよね。でも、脳はそれを許してくれません。
なぜなら、太古の昔、私たちのご先祖様にとって「視覚的なノイズ(複雑な茂み)」は、命に関わる脅威だったからです。
「あ、なんか散らかってるけど、まあいいか」とスルーした鈍感な祖先は、真っ先に食べられて絶滅しました。
生き残ったのは、視界に入る全ての違和感を「敵かもしれない!」と過剰にスキャンし、警戒し続けた、超・心配性な人たちの子孫なのです。
現代の散らかった部屋は、脳にとって「どこに敵が潜んでいるか分からないジャングル」と同じ。
だからこそ、「敵はいないか?」という本能的なセキュリティシステムが誤作動を起こし続け、永遠に警戒警報(ストレス)が解除されないのです。
「でも、散らかっている方が落ち着くし、刺激があって記憶に残るのでは?」
そう思う方もいるかもしれません。確かに、脳の「扁桃体(感情の中枢)」が刺激されると記憶は定着しやすくなります。
しかし、散らかった部屋による刺激は、「記憶の定着」にとって最悪の種類の刺激です。
では、どうすればいいのか?
「ミニマリストになれ」とは言いません。重要なのは、脳のセキュリティシステムを安心させるために、「視界に入る情報量(ノイズ)」を減らすことです。
脳は「平らな面(見通しの良い平原)」を見ると、安心と秩序を感じます。
まずは、デスクの上、ダイニングテーブルの上、床。この3つの「平面」にあるモノを、とにかく別の場所(引き出しや箱)に移動させてください。
「捨てる」かどうかは後でいいのです。まずは視界から消し、平面を作る。これだけで、脳の負荷は激減します。
モノの色数が多いことも、強力な視覚ノイズです。
本や洗剤、食品パッケージなど、色がうるさいものは「見えない収納」にするか、白いファイルボックスなどで「隠す」のが正解です。
「見せない」ことは、脳にとって「存在しない(敵ではない)」ことと同義です。
片付けが挫折する一番の原因は、「これを捨てるか、どこに置くか」という「決断疲れ」です。
疲れている時は、決断してはいけません。
「とりあえずボックス」を用意し、迷うモノは全てそこに放り込んで、蓋をして、視界から消してください。
「処理」は元気な時に。「ノイズ除去」は今すぐに。この切り分けが、脳を守るコツです。
大掃除とは、「神様を迎える準備」である前に、「野生の本能におびえる、あなたの脳を安心させるためのメンテナンス」です。
今年一年、過剰なセキュリティシステムを働かせて頑張ってくれた脳のために。
まずは机の上にあるそのペン一本を、引き出しにしまってみませんか?
それだけで、あなたの脳のメモリは、少しだけ軽くなるはずです。