- とろLabo用語集
- 2025年6月8日
【ワーキングメモリ】ワーキングメモリって何?~“頭の良さ”を支える脳の短期記憶と作業台~【とろLabo用語集 Vol.6】
「今、何をしようとしてたんだっけ…?」「会話の途中で、相手の……

一般的に「神経質な性格」として片付けられがちなこれらの気質は、近年の心理学においてHSP(Highly Sensitive Person)という名称で再定義されています。
これは病気や障害ではなく、全人口の約15〜20%に見られる「感覚処理感受性(Sensory Processing Sensitivity:SPS)」が高い人々を指す心理学用語です。
この記事では、提唱者であるエレイン・N・アーロン博士の理論に基づき、HSPの学術的な定義、診断基準となる「DOES」、そしてなぜこの気質が進化の過程で残されてきたのかを解説します。
HSPとは、環境からの刺激に対する感受性が極めて高く、脳内で情報を深く処理する生得的な気質を持つ人々を指します。
学術的にはSPS(Sensory Processing Sensitivity)という概念で研究されています。
なぜ、生きづらさを感じるほど敏感な個体が存在するのでしょうか?
生物学の研究によると、ヒトだけでなく、マウス、魚、ハエなど100種類以上の動物に、同じ割合(約20%)で「高敏感な個体」が存在することが確認されています。
進化心理学の視点では、集団の中に「危険をいち早く察知し、慎重に行動する個体(HSP)」がいることは、種全体の全滅を防ぐための重要な生存戦略(リスクヘッジ)であると考えられています。
つまりHSPは、生物学的に必要な役割を担って生まれてきた存在なのです。
アーロン博士は、HSPを定義する必須条件として「DOES(ダズ)」と呼ばれる4つの特性を挙げています。
これらすべてに当てはまる場合、HSPである可能性が高いとされます。

概要
一つの情報から多くの意味を読み取り、深く思考する特性。
例
「1を聞いて10を知る」、浅い雑談よりも深い哲学的な話を好む、決断に時間がかかる(リスクをシミュレーションするため)。
概要
外部からの刺激(音、光、人、情報)に対する閾値が低く、すぐにキャパシティオーバーになる特性。
例
人混みや騒音が苦手、パーティーなどの後は一人で静かに過ごす時間(ダウンタイム)が必須、驚きやすい。
概要
ミラーニューロンの働きが強く、他者の感情を自分のことのように感じる特性。
例
映画や芸術作品に深く感動して涙する、友人が怒られていると自分まで辛くなる、場の空気を瞬時に読む。
概要
非HSPが見落とすような微細な環境の変化に気づく特性。
例
冷蔵庫の機械音や時計の秒針が気になる、衣服のタグのチクチクが耐えられない、気圧の変化で体調を崩す。
HSPの脳をfMRI(機能的磁気共鳴画像法)でスキャンすると、非HSPとは異なる反応が見られます。
特に顕著なのが、不安や恐怖を感じる「扁桃体(へんとうたい)」の過剰反応です。
HSPの脳は、わずかな刺激に対しても扁桃体が強く反応し、警戒モード(ノルアドレナリンの放出)に入りやすい状態にあります。
これは「怖がり」なのではなく、「危険検知センサーの感度が、標準よりも高く設定されている(高性能レーダーを搭載している)」と解釈するのが神経科学的に正確です。
発達心理学には、子供の気質を花に例える「オーキッド・ダンデライオン仮説」があります。
タンポポ(非HSP)
どんな環境でもたくましく育つが、環境が良くても悪くても成長度は平均的。
ラン(HSP)
環境が悪いとすぐに枯れてしまうが、適切な環境で育てば、タンポポ以上に美しく、優れた花を咲かせる。
これを専門用語で「差次感受性(Differential Susceptibility)」と呼びます。
HSPは単に「ストレスに弱い」だけではありません。「良い環境(支援や理解)」からも、人一倍多くの養分を吸収し、高い能力を発揮するポテンシャルを秘めているのです。
HSPは、病名ではなく、身長や目の色と同じ「生まれ持った気質(Trait)」です。
したがって、治療して治すものでも、鍛えて鈍感にするものでもありません。
重要なのは、自分が「DOES」という特性を持っていることを客観的に理解し、その高感度なセンサーに合った生活環境(OS)を整えることです。