【脳科学】なぜ、不安になると「お腹が痛くなる」人、「多弁になる」人がいるのか?脳の警報装置“扁桃体”が引き起こす、心と体の暴走メカニズムと対処法

【脳科学】なぜ、不安になると「お腹が痛くなる」人、「多弁になる」人がいるのか?脳の警報装置“扁桃体”が引き起こす、心と体の暴走メカニズムと対処法

人前でのスピーチ前、急にお腹が痛くなる…。
大事な会議で、不安を隠すように、つい早口で多弁になってしまう…。

同じ「不安」や「緊張」というストレスでも、その現れ方は人それぞれです。
今回は、なぜ心が不安を感じると、体が暴走してしまうのか?その脳のメカニズムを解き明かし、あなたの心と体を落ち着かせるための、科学的なセルフケア法をご紹介します。

第一章:不安の震源地。脳の“警報装置”「扁桃体」

すべての始まりは、脳の奥深くにある「扁桃体(へんとうたい)」です。ここは、危険や不安を察知する警報装置。
扁桃体が「危険だ!」と判断すると、理性を司る「前頭前野」の制御を振り切り、体全体に緊急事態宣言を発令します。これが、あなたの体が暴走を始めるスイッチです。

第二章:【タイプ別】なぜ、その「反応」が出るのか?

扁桃体の警報は、主に二つのルートで体に伝わります。

  1. ケース1:「お腹が痛くなる」人(内側への身体反応)
    警報が「自律神経系」を直撃し、交感神経が過剰に働きます。これにより、胃腸の働きが異常に活発化したり、逆に停止したりします。これが「脳腸相関」の正体です。脳の不安が、直接、お腹の不調を引き起こしているのです。
  2. ケース2:「多弁・攻撃的になる」人(外側への行動反応)
    これは、脳の「闘争・逃走反応(Fight or Flight)」の表れです。不安という「脅威」に対し、「闘う(攻撃的になる、多弁になる)」か「逃げる」か、という原始的な防衛本能が作動している状態。不安を、言葉でまくしたてて打ち負かそうと、脳が必死になっているのです。

第三章:【処処方箋】“扁桃体”の警報を、理性で鎮める3つの方法

では、暴走する扁桃体を、どうすれば落ち着かせることができるでしょうか。

  1. 「深呼吸」という、最強の物理スイッチ(身体反応に効く)
    お腹が痛くなったり、動悸がしたりするのは、呼吸が浅くなっているサインです。「4秒吸って、7秒止め、8秒かけて吐く(4-7-8呼吸法)」など、ゆっくりとした深い呼吸は、強制的に副交感神経を優位にし、扁桃体の興奮を物理的に鎮めます。
  2. 「ラベリング」で、前頭前野の主導権を取り戻す(行動反応に効く)
    不安で多弁になりそうになったら、心の中で「あ、今、私は“不安だ”と感じているな」と、自分の感情を実況中継(ラベリング)します。これにより、感情(扁桃体)ではなく、理性(前頭前野)が再び主導権を握り始め、冷静さを取り戻すことができます。
  3. 「体の感覚」に、意識を集中させる(両方に効く)
    不安は「未来」や「他人の評価」に向かっています。その意識を、強制的に「今、ここ」の体に戻します。「足の裏が、床に触れている感覚」「指先が、冷たくなっている感覚」など、体の感覚に5秒間だけ集中する。これだけで、暴走する思考をリセットできます。

まとめ

不安や緊張から生まれる体のサインは、「異常」ではなく、あなたを守ろうとする脳の「正常な反応」です。そのメカニズムを知り、正しく対処することで、私たちは、暴走する心と体の、優れた「調教師」になることができるのです。