
会議で、発言がいつも同じメンバーに偏ってしまう…。
飲み会で、一部のグループだけが盛り上がり、他の人は手持ち無沙汰…。
そんな、少し気まずい空気を一変させ、全員を会話の輪に自然に巻き込む「話を回せる人」。あなたの周りにも、一人はいませんか?
「あの人には、人を惹きつける才能があるんだ…」
そう思うかもしれませんが、実はそれは、センスや才能ではありません。誰でも学び、実践できる、具体的な「技術」なのです。
今回は、あなたが「会話の傍観者」から「会話の演出家(ディレクター)」へと生まれ変わるための、3つの“会話演出術”を解説します。
【第1章】目的は「話す」のではなく「演出する」こと
まず、最も重要な心構えです。
「話を回せる人」は、自分が面白い話をしようとはしません。彼らの目的は、全員が安心して、気持ちよく話せる「舞台」を作り、皆を主役にしてあげることです。
あなたが目指すのは、スポットライトを浴びる俳優ではなく、舞台全体を見渡し、最高のショーを作り上げる、名演出家。このマインドセットが、全ての技術の土台となります。
【第2章】実践!3つの“会話演出術”
では、具体的な技術を見ていきましょう。
①「橋渡しの術」:会話と会話、人と人を繋ぐ
Aさんの話とBさんの話を繋げたり、話している人と聞いている人を繋げる、最も基本的なテクニックです。
- 会話例:
- Aさん:「最近、キャンプにハマってまして…」
- あなた:「〇〇さんのキャンプ話、面白いですね!そういえばBさん、以前、料理が得意だとおっしゃっていましたよね。キャンプ飯とか、何かおすすめってありますか?」
- ポイントと留意点:
- 普段から全員の話をしっかり聞くことが絶対条件です。「誰が、何に興味があるか」という情報を頭に入れておくことで、自然な「橋」を架けられます。強引に繋げようとすると、かえって不自然になるので注意しましょう。
②「スポットライトの術」:静かな人に、優しい光を当てる
なかなか会話に入れていない人に、発言のきっかけを作るテクニックです。
- 会話例:
- (仕事の話で盛り上がっている時、静かなCさんへ)
- あなた:「このテーマ、Cさんのご専門分野に少し近いと思うのですが、私たちの議論を聞いていて、何か少しでも感じたことや、気になった点はありますか?どんな小さなことでも構わないのですが」
- ポイントと留意点:
- NGなのは「Cさんはどう思う?」と、いきなり意見を求めること。これは、相手に大きなプレッシャーを与えます。
- 「どう思う?」ではなく、「どう感じた?」と感想を尋ねる、「気になった点は?」と気づきを尋ねるのが、優しさです。答えやすい、低いハードルの質問で、相手が話し出すきっかけを作りましょう。
③「要約と転換の術」:話の交通整理をする
一つの話題が一段落した時や、議論が発散してしまった時に、話を整理し、次の展開へ導くテクニックです。
- 会話例:
- あなた:「なるほど、Aという問題については、『〇〇』と『△△』という二つの視点がある、ということで皆さんよろしいでしょうか。非常に面白い議論でしたね。では、この視点を踏まえて、次にBの問題に移りましょうか」
- ポイントと留意点:
- 人の話を遮ってはいけません。会話の自然な切れ目や、皆が少し考え込んでいるような「間(ま)」を見つけて切り出すのが重要です。
- 要約が、誰かの意見を無視していないか、公平であることを心がけましょう。
【まとめ】
「話を回せる人」とは、思いやりの達人です。
自分のためではなく、その場にいる全員が「この場にいて良かった」と思えるように、頭と心を働かせる。その利他的な姿勢こそが、結果的にあなたの評価を上げ、「あの人がいると、場が盛り上がる」という、かけがえのない中心人物にしてくれるのです。