
はじめまして。あるいは、いつも、ありがとうございます。
とろLaboの、記念すべき100本目の記事へようこそ。
私たちはこれまで99本の記事を通して、コミュニケーションの技術、脳の不思議、心のクセ、体の整え方など、様々な「知恵」を探求してきました。
しかし、どんなテクニックを学んでも、どんな知識を身につけても、もし、あなたが心の奥底で、自分自身のことを「ダメな人間だ」と責め続けているとしたら、その知恵は、決して本当の力にはなりません。
すべての土台の土台、根っこの根っこにあるもの。
それこそが「自己肯定感」です。
100本目の記事となる今回は、とろLaboが最も伝えたかった、すべての人の心のお守りとなる、「自己肯定感」の科学について、心を込めてお話しします。
あなたが苦しんでいるのは、「自己肯定感」ではないかもしれない
「自己肯定感」とは、非常に誤解されやすい言葉です。
多くの人が、「何かを達成できたから自分を好きになる(=自己“効力”感)」ことや、「他人より優れているから自信が持てる(=優越感)」ことと、混同してしまっています。
しかし、本当の「自己肯定感」とは、もっと静かで、もっと温かいものです。
それは、「自分は、良いところも、悪いところも、すべて含めて、そのままで価値のある存在だ」と、穏やかに信じられる心のこと。成功しても、失敗しても、その価値は揺らがない。そんな、人生の嵐の中でも、あなたを支え続ける、心の「錨(いかり)」のようなものです。
なぜ、私たちは自分を責めてしまうのか?脳科学の答え
自分を責めてしまう傾向は、決してあなたの「性格」が悪いからではありません。
それは、脳の「仕組み」と「経験」によって作られた、一つのクセに過ぎないのです。
- 過活動な「扁桃体(へんとうたい)」
自己肯定感が低い人の脳は、危険を察知する警報装置である「扁桃体」が、非常に敏感になっています。他人の些細な言動や、自分の小さなミスを、過剰な「脅威」として認識し、常に不安や恐怖を感じやすい状態にあります。 - 機能低下した「前頭前野(ぜんとうぜんや)」
扁桃体の警報をなだめ、冷静な判断を下す「司令塔」である前頭前野の働きが、慢性的なストレスによって低下しています。これにより、一度生まれたネガティブな思考のループから、抜け出しにくくなってしまうのです。
【処方箋】「自分への思いやり(セルフコンパッション)」という科学的トレーニング
では、どうすればこの心の錨を、自分の中に育てることができるのでしょうか。
その答えは、「無理に自分を好きになろう」とすることではありません。
心理学の世界で今、最も注目されている「セルフコンパッション(自分への思いやり)」という、具体的な心のトレーニングを実践することです。
これは、「もし、自分の大切な親友が、自分と全く同じことで悩んでいたら、自分はどんな言葉をかけるだろうか?」と自問し、その言葉を、そっくりそのまま自分自身にかけてあげる、という考え方が基本になります。
セルフコンパッションは、主に3つの要素で構成されています。
1. 自分への優しさ(Self-Kindness)
失敗した時、「なんてダメなんだ」と自分を鞭打つのではなく、「辛かったね」「誰にでもあることだよ」と、自分に優しく語りかけます。批判者ではなく、自分の最高の味方になる練習です。
2. 共通の人間性(Common Humanity)
「こんなことで悩んでいるのは、世界で自分だけだ…」という孤独感から抜け出します。失敗や欠点は、すべての人間に共通する、当たり前の経験の一部である、と認識すること。「自分だけではない」という感覚が、心を癒します。
3. マインドフルネス(Mindfulness)
自分のネガティブな感情を、無視したり、大げさに騒ぎ立てたりするのではなく、ただ、ありのままに「観察」します。「ああ、今、私は悲しいと感じているんだな」と。感情の波に飲み込まれるのではなく、波を静かに眺める感覚です。
最後に:とろLaboから、あなたへ
とろLaboは、この100本の記事を通して、あなたの心と体と頭を、少しでも健やかにするための「知恵」を届けたい、と願ってきました。
もし、あなたが今、自分を責める気持ちに苦しんでいるのなら。
どうか、思い出してください。
あなたは、何かを達成しなくても、誰かに認められなくても、ただ、そこにいるだけで、かけがえのない価値のある存在です。
この記事が、あなたが自分自身へ、温かい思いやりを向ける、小さなきっかけになることを、心から願っています。
そして、これからもとろLaboは、あなたの人生の旅路における、最高の参謀であり続けたいと思っています。
100回のありがとうを、あなたへ。